VARIAN REPORT

2020年7月号

がん医療における放射線治療最前線 No.10

VariSource iXによるIGBTと精度管理の実際

和氣 治雄(東京医科大学病院放射線治療部) 黒岡 将彦(東京医科大学病院放射線治療品質管理室)

はじめに

放射線治療には,「外部照射」と「内部照射」があり,このうち内部照射に該当する高線量率密封線源を用いた腔内・組織内治療に用いられているのが,遠隔操作式後充填照射装置(remote after loading system:RALS)である。当院では,高線量率イリジウム線源(192Ir)を用いたRALSとして,バリアン社製「VariSource ID」を1998年11月に導入し,その後継機種となる「VariSource iX」による治療を2013年9月より行っている。本稿では,VariSource iXの使用経験から見た特徴や運用について紹介する。

装置の特徴

VariSource iXは,QAツールとして線源ワイヤ長を計測する「CamScale自動位置検証システム」を装置本体に内蔵している。これは,模擬線源・本線源両方のワイヤ長を確認するシステムである。本体付属の専用アプリケータを接続し,長さ80cmおよび140cmの2点にワイヤを繰り出し,スケール上に設置してあるCCDカメラを使用して画像を取り込むことで確認を行う(図1)。線源自体を直接撮影し画像化できるため,ワイヤ長の計測のみならず線源ワイヤ本体のクラックなど,線源輸送にかかわる異常の有無を確認できるので,線源ワイヤの健全性をも確認可能なシステムである。過去に米国において線源ワイヤの破損による事故1)がRALSにて発生しており,線源ワイヤの健全性を画像上確認できるシステムは,きわめて意義深いものである。装置の運用面においても,装置本体の専用アプリケータを接続するだけの簡便な使用法なので,当院では治療当日の始業点検項目として実施している。

図1 CamScale自動位置検証システムによる線源ワイヤ長の計測

図1 CamScale自動位置検証システムによる線源ワイヤ長の計測

 

画像誘導密封小線源治療(IGBT)について

当院は2019年7月より新病院が開院し,リニアックは「TrueBeam STx」および「TrueBeam」が各1台,外部照射治療計画ソフトウエアとして“Eclipse”,放射線治療情報システムとして「ARIA」(以上,すべてバリアン社製)が新規導入され稼働している。VariSource iXおよび小線源治療計画ソフトウエア“BrachyVision”(Eclipse内に統合されたソフトウエア)は旧病院から新病院に移設して,継続使用している。
IGBTは2011年5月より治療計画用CTを用いて行っていたが,治療室とCT室が離れており患者移動に苦慮していた。新病院では,RALS治療室内にCアーム型血管撮影装置を設置し,コーンビームCTによるIGBTを行っている(図2,3)。BrachyVisionは,輪郭入力などといった基本的な操作がEclipseと同じであり,Eclipseを使い慣れているユーザーであれば違和感なく操作可能である。近年ではスクリプトを利用した治療計画手技の効率化が普及してきているが,当院においても段階的にvisual scripting機能の導入を図っており,現在はスクリプト機能を利用した線量体積ヒストグラム(DVH)の自動評価を行っている(図4)。

図2 RALS治療室内概観

図2 RALS治療室内概観

 

図3 コーンビームCTによるIGBT治療計画

図3 コーンビームCTによるIGBT治療計画

 

図4 スクリプト機能を用いたDVH評価

図4 スクリプト機能を用いたDVH評価

 

192Irアフターローディング線源

1.線源構造と物理的特性
現在,VariSource iXで使用されている192Ir線源はVS2000タイプで,放射性金属192Irをニッケルチタニウム合金製カプセルに溶接密封した構造である。空気カーマ率定数Γδおよび線量率定数Λは,それぞれ0.1091[μGy h−1 MBq−1 m2],1.100[cGy h−1 U−1]である2)

2.線源強度計測と線源データ登録
VS2000線源は,米国のAlpha-Omega Services(AOS)社もしくは欧州のNTP Radioisotopes社で線源強度検定および品質管理が実施され,線源検定書とともに納品される。各施設は線源納品後,日本医学物理学会の『密封小線源治療における吸収線量の標準計測法(小線源標準計測法18)』3)に準じて線源強度(空気カーマ率δ,R[mGy h−1 m2])を計測し,線源検定書との相違がないか確認しなければならない。
小線源標準計測法18において,K̇δ,Rは以下のように定義されている。

δ,R=MQ・NK ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (1)
MQ=M̅raw・kTP・kelec・kpol・ks ・・・・・・・・・ (2)

ここで,MQ:各種補正後の電離箱表示値,NK:空気カーマ校正定数,raw:電離箱表示値,kTP:大気補正係数,kelec:電位計補正係数,kpol:極性効果補正係数,ks:イオン再結合補正係数,である。
kelecおよびkpolは,ウェル形電離箱線量計の校正が電位計と一体で実施され,校正時に極性効果が補正されなかった場合にはそれぞれ1.0となる。ksは1/2電圧法で補正されるのが一般的である4)rawは,必ずタイマ端効果を補正した値を採用しなければならない。ウェル形電離箱線量計の最大感度点において120秒および60秒で計測された電離量の差分が,タイマ端効果が補正された“真の”60秒での電離量である。筆者の経験では,VariSource iXの場合,タイマ端効果の補正を無視した場合の電離量は,真の電離量から1.5%程度過大評価される。
VariSource iX本体へ線源強度を登録するには,施設で線源強度計測を実施した日時での電離箱表示値をシステムに登録する。電離箱表示値と一緒にシステムに登録する室温および気圧によってkTPは補正されるため,システムに登録する電離箱表示値は,式(2)のうちkTPを除いた値であることに注意が必要である。ここで登録された電離箱表示値から,線源検定日の正午にさかのぼった空気カーマ率が自動算出され,あらかじめシステムに登録した線源検定結果と比較検証される。
Eclipseに登録される線源強度は,施設での線源強度計測日の深夜0時での空気カーマ率δ,R[mGy h−1 m2]である。VariSource iX本体とEclipseで,登録される線源強度の時刻が異なるので注意が必要である。

おわりに

バリアン社製RALSであるVariSource iXについて,当院での運用と精度管理のごく一部について紹介した。VariSource iXは治療計画にEclipseを使用し,患者治療情報をARIAで管理することから,バリアン社製リニアックで実施している外部照射との連携が取りやすい。また,装置本体にQAツールを内蔵しているため,日常点検を効率的に実施することが可能である。

●参考文献
1) U.S.NRC Information Notice No. 92-84 : Release of Patients Treated With Temporary Implants.
2) Perez-Calatayud, J., Ballester, F., Das, R.K., et al. : Dose calculation for photon-emitting brachytherapy sources with average energy higher than 50 keV : Report of the AAPM and ESTRO. Med. Phys., 39(5): 2904-2929, 2012.
3) 密封小線源治療における吸収線量の標準計測法(小線源標準計測法18). 日本医学物理学会編, 通商産業研究社, 東京, 2018.
4) Balas, D., Sakelliou, L., Zamboglou, N. : The physics of modern brachytherapy for oncology. Taylor & Francis, London, 2007.

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