VARIAN REPORT

2021年9月号

人にやさしいがん医療を 放射線治療を中心に No.5

ARIA OIS の使用経験

小玉 卓史(東京ベイ先端医療・幕張クリニック医療技術部医学物理室)

はじめに

近年の放射線治療システムは,放射線治療装置以外に電子カルテや治療RIS,位置照合装置などの機能特化したシステムが相互接続され,高度かつ複雑化している。当院は,バリアン社製放射線治療情報システム「ARIA OIS」を採用することで,業務効率改善,他社製の画像誘導放射線治療(IGRT)機器を包括した照射録管理,日本放射線腫瘍学会(JASTRO)による放射線治療症例全国登録(JROD)の院内推進,放射線治療システムの導入費・保守費の削減を図ることができると判断し,2020年12月からARIA OISの運用を開始した。本稿では当院でのARIA OISの導入経験から,その有用性について報告する。

統合型放射線治療システム

当院はバリアン社製の放射線治療装置と治療情報システム,治療計画装置によって,単一データベースにデータを統合して一元管理された統合型放射線治療システムを構築した。ARIA OISはHL7に準拠した連携インターフェイスを備えており,当院では患者基本情報に加えて疾患情報が電子カルテと連携できるようになって,照射部位に関する情報の転記が不要になった。また,ARIA OISに登録された線量処方情報をデータ引用して治療計画を作成することが可能になったほか,治療計画パラメータなどのデータ転送とそれに伴う確認作業が削減されて業務効率が改善した(図1)。
問診・アンケート用のアプリケーションである“Questionnaires”は,入力インターフェイスのカスタマイズが可能であり,入力データはデータベースに格納され,レポーティングツールである“AURA(ARIA Unified Reporting Application)”からデータの二次利用が可能である。当院ではカンファレンスやセットアップの情報を入力するために使用し,AURAで固定具情報レポートを作成して治療時に活用している(図2)。

図1 システム連携の比較

図1 システム連携の比較

 

図2 QuestionnairesとAURAによる固定具情報の登録および参照画面

図2 QuestionnairesとAURAによる固定具情報の登録および参照画面

 

“CarePath”によるタスク管理

CarePathは放射線治療業務のタスク管理を行う機能であり,業務の標準化と進捗状況の可視化を支援する。タスクの粒度は施設の運用に合わせて柔軟に定義でき,システム稼動後でも容易に変更が可能である。タスクは呼び出しアプリケーションの指定やチェックリストを付加でき,施設で定めた作業手順からの逸脱防止や,タスクごとに定めた確認事項の提示など作業の標準化に活用できる。タスクは個人または職種に対して割り当てることが可能で,職種をまたいだタスクの進捗状況管理や業務量平準化を図れる。ただし,ARIA OISでは,タスクを割り当てた個人(職種)や患者ごとの進捗状況の確認は容易だが,俯瞰的にタスクがどこで滞っているかを把握しづらい。当院では,次項で詳述するAURAで進行中の全タスクの進捗状況が把握できるレポートを作成して機能補完している(図3)。

図3 AURAで作成したCarePathの進捗一覧

図3 AURAで作成したCarePathの進捗一覧
進行中の全タスクを俯瞰的に確認することができる。

 

柔軟で多彩なレポーティングツール

ARIA OISでは,照射録などの帳票作成にAURAと呼ばれるレポーティングツールを使用する。AURAは,データベースに採用する“Microsoft SQL Server”(マイクロソフト社)のReporting Servicesを使ってレポートの作成や配置,配信する仕組みを提供する。AURAは,データベースに格納されている情報を基に柔軟なレイアウトを構成でき,ARIA OISや放射線治療計画ソフトウエア“Eclipse”(バリアン社)の標準アプリケーションでは不可能な情報集約や表示レイアウトを実現する。当院では,用途に合わせてさまざまなレポートを作成して業務効率とユーザビリティの向上を図っている(図4)。
AURAで作成したレポートは,URLアクセスを使ってWebブラウザから閲覧することも可能である。当院では,電子カルテや,X線モニタリングシステム「ExacTrac」(ブレインラボ社製),光学式患者ポジショニングシステム「AlignRT」(Vision RT社製)といったアプリケーションのインストールに制限が設けられている端末からもレポートを呼び出して活用している。

図4 AURAで作成した患者別治療情報一覧

図4 AURAで作成した患者別治療情報一覧
標準アプリケーションでは困難なレイアウトと情報集約を実現している。

 

“ARIA eDoc”によるドキュメント管理の省力化

放射線治療の業務ではさまざまな文書が発生し,サーバや端末内で一時保存したのち,治療RISのドキュメント管理システムへ登録することが多く,保存時の名称間違いや登録間違いなどのリスクが生じる。ARIA OISでは,ARIA eDocと呼ばれる仮想プリンタアプリケーションとドキュメント管理システムが提供されている。ARIA eDocは,仮想プリンタで印刷された文書内の患者情報や治療計画情報を識別して,ドキュメント管理システムへ文書を登録する。つまり,各システム(他社製品も含む)から文書を“印刷”するだけでARIA OISのドキュメント管理システムに自動的に登録されるため,前述の登録間違いのリスク低減と登録作業の省力化が図れる。

他社製IGRT機器を包括した照射録管理

リニアックとは独立した他社製IGRT機器を使用している場合,各システムで個別に照射録を管理するか,治療RISなどの別システムに入力して照射録を作成する必要がある。ARIA OISでは,データベースに登録されたIGRT画像の照射条件や照射線量に関する情報を基にAURAで照射録を作成できるため,他社製IGRT機器に関しても,DICOM画像をARIA OISのデータベースに取り込むことで照射録に載せることが可能である。当院ではARIA OISの運用開始後,業務終了後にExacTracから当日分のIGRT画像をARIA OISへ一括送信するだけで,他社製IGRT機器を包括した照射録を簡便に一元管理できるようになった。

ARIA OISへの今後の期待

当院は,ARIA OISから電子カルテシステムへ会計情報を送信する方式で運用しているが,ARIA OISは本邦の診療報酬制度に沿って自動算定する機能が不十分であり,従来使用していた治療RISに比べて治療実施時の作業量が増加した。今後は本邦の診療報酬制度に沿って自動算定が可能な機能が実装されることを,ARIA OISに期待する。

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