VARIAN RT REPORT
2026年1月号
人にやさしいがん医療を放射線治療を中心に No.31
たった1つのHalcyon治療室から広がる新たな可能性 ─ HyperSightのCBCTpモードによる効率的なワークフローの実現
東 龍太郎(医療法人宮崎博愛会 さがら病院宮崎放射線科)久峩 尚也(医療法人宮崎博愛会 さがら病院宮崎放射線技術部)
はじめに
さがら病院宮崎では,2025年1月の新規移転オープンと同時に高精度放射線治療センターを開設し,最新の「HyperSightイメージングソリューション」を搭載した「Halcyon version 4.0」(バリアン社製)を導入した。HyperSightによるコーンビームCT(HS-CBCT)は,従来と比較してより短時間でより高画質な画像が取得可能であり,イニシャル治療計画にCBCT画像を用いる新しいワークフローが実現可能な「CBCT for planning(CBCTp)」という機能が追加された。本稿では,CBCTpの機能および臨床導入に向けた検討と臨床症例について紹介する。
CBCTpの機能
放射線治療情報システム「ARIA」(バリアン社製)に登録された患者をCBCTpモードで読み出す。仮想アイソセンターの位置にて治療体位を決定し,アイソセンターへ寝台移送する。トポグラムを撮影しCBCTの撮影範囲を決定後,iterative CBCT(iCBCT)Acurosモードにて撮影を行う。取得したHS-CBCT画像は,スライス厚の変更やmetal artifact reduction処理などの後処理も可能である。撮影後はガイドに従って仮想アイソセンターへ寝台移送し,皮膚マーキングを行うことができる。
CBCTpワークフローのメリット
CBCTpを用いることで治療計画の一連の作業を治療室内のみで完結可能となり,別室CT装置を要する従来のワークフローからの大きな転換点となる(図1)。これにより,(1) 体表面モニタリングシステム「IDENTIFY」(バリアン社製) を併用した呼吸性移動や撮影中の体動の管理が可能,(2) オフライン適応放射線治療のための再治療計画CT画像をスムーズに取得可能,(3) 患者の全身状態が不良である場合や緊急放射線治療などにおいてCT室と治療室間の移動などの患者負担を軽減可能,などのメリットが生まれる。また,治療計画専用CT装置の導入コスト抑制に加えて,CT装置を診断と兼用する施設では,CT装置の稼働率向上を通じて経営資源の最適化に寄与する可能性がある。
図1 CBCTpのワークフロー
(バリアン社より一部画像提供あり)
HS-CBCTの臨床導入に向けた検討
2025年1月から同年8月の期間に,強度変調回転放射線治療(VMAT)にて緩和的放射線治療を実施した13症例17部位(脳2例,胸椎5例,腰椎5例,骨盤骨5例)を対象に,後方視的に線量分布解析を行った。従来どおり治療計画CT(pCT)画像を用いて,計画標的体積(PTV)のD50にて線量正規化をした治療計画(PTV D50処方)を作成した。HS-CBCT画像は,初回治療の画像誘導放射線治療(IGRT)においてiCBCT Acurosモードで取得した。pCT画像とHS-CBCT画像を3軸並進方向で剛体レジストレーションを行い,HS-CBCT画像へ置換し,同じ線量正規化条件にて治療計画を作成した。2つの治療計画の線量分布比較は,アイソセンターの3断面(transverse:Tra / saggital:Sag / coronal:Cor)についてガンマ解析(DD/DTA:3%/2mm,2%/2mm,1%/1mm,threshold:80%)にて評価した。その結果,全症例において2%/2mmのガンマパス率は95%以上であった(図2 a)。総MUの誤差の平均値および標準偏差は,脳:−0.03±0.18%,胸椎:−0.56±0.81%,腰椎:−0.55±0.37%,骨盤骨:−0.11±0.23%であり,全症例において±1.5%以内であった(図2 b)。胸椎では,ほかの部位と比べてわずかに誤差のバラツキが大きく,呼吸性移動に伴うモーションアーチファクトの影響が考えられた。
図3に,下部胸椎に対する自由呼吸下と固定シェルを用いた腹部圧迫による呼吸抑制下におけるガンマ解析(1%/1mm, threshold 80%)の画像,およびガンマパス率の結果を示す。横隔膜レベルにおいて,モーションアーチファクトによる線量計算誤差が呼吸抑制によって改善していることが確認できる。呼吸性移動の大きい部位において,その影響に対する対策について検討する必要がある。
図2 pCT画像とHS-CBCT画像を用いた治療計画のガンマ解析(a)および総MUの誤差(b)の比較
図3 HS-CBCT画像とガンマ解析(1%/1mm, threshold 80%)のマージ画像(Traは横隔膜レベル)およびガンマパス率
a:自然呼吸下 b:固定シェルを用いた腹部圧迫による呼吸抑制下
臨床症例の紹介
前述の検討結果を踏まえ,2025年8月より,呼吸性移動の影響の少ない部位を対象にCBCTpワークフローの臨床運用を開始した。以下に,臨床症例におけるHS-CBCT画像と診断CT(dCT)画像を用いた治療計画の線量分布の比較を示す。CT装置は診断と治療で兼用であるため,dCT画像を用いた治療計画ではpCTと同じ電子密度変換テーブルを用いた。
● 症例1:多発脳転移に対する全脳照射30Gy/10Fr(PTV D50処方)
経過観察目的にて撮影されたdCT画像を用いて線量分布を比較した。PTVの最大線量の差は0.7%,総MUの誤差は0.2%(1.1MU)であり,線量体積ヒストグラム(DVH)は良好に一致した(図4)。
図4 症例1におけるHS-CBCT(左)とdCT(右)の線量分布の比較
● 症例2:第4腰椎から左骨盤骨の骨転移に対する緩和照射 25Gy/5Fr(PTV D50処方)
腸管ガスによるアーチファクトを懸念し,IDENTIFYを併用した自然呼気息止め(10秒程度)にて撮影した。dCT画像は,放射線治療計画支援システム「Velocity」(バリアン社製)を用いて非剛体レジストレーションを行った。PTVの最大線量の差は1.3%,総MUの誤差は0.3%(3.1MU)であり,DVHは全体としておおむね一致した(図5)。一方,膀胱および消化管のDVHに認められたわずかな差異は,腸管ガスの位置・量の違いに起因すると推察された。
図5 症例2におけるHS-CBCT(左)とdCT(右)の線量分布の比較
まとめ
本稿では,CBCTpの機能および臨床導入に向けた検討と臨床症例を紹介した。呼吸性移動の大きい部位ではモーションアーチファクトの影響が課題となるため,固定具による呼吸性移動の抑制や息止め照射などの対策が考えうる。息止めによる患者への負担や再現性に課題はあるが,前者は患者にやさしいHalcyon HyperSightの特性によって,また,後者はIDENTIFYの併用によって解決可能と考えられる。これらの対策は,全身状態などの患者背景や線量分割回数,緊急性の有無などを踏まえて適切に選択する必要がある。今後は,CBCTpを用いた効率的な治療計画ワークフローの適応拡大に向けて,さらなる検討を進めていく。
