VARIAN RT REPORT
2026年5月号
人にやさしいがん医療を放射線治療を中心に No.33
Halcyon HyperSightによる位置合わせ用のCBCT画像を使用した効率的なOffline ART ─前立腺編─
猪股 淳二/不破 端宏/原田 慶一(社会医療法人北腎会 坂泌尿器科病院放射線治療センター)
はじめに
当センターは,前身となる脳神経・放射線科クリニックの放射線治療装置更新に伴い,2023年11月に同法人の坂泌尿器科病院へ移転・統合した。当初はバリアン社製「Halcyon version4.0」を導入したが,2024年2月に「version4.0 HyperSight」へアップグレードを行い,現在は前立腺がんを主とした泌尿器科領域の放射線治療を実施している。前立腺がんの放射線治療では,治療期間中に直腸の状態や膀胱の尿量変化などさまざまな要因により,骨構造からの前立腺の移動量が大きくなることがある。この移動量を補正し,また,隣接する小腸や結腸の線量制約を満たす目的で再治療計画を必要とするケースがある。
本稿では,前立腺がんの再治療計画において,「Halcyon HyperSight」による位置合わせ用のcone-beam computed tomography(CBCT)画像を使用したoffline adaptive radiotherapy(Offline ART)について紹介する。
Offline ARTの条件
Halcyon HyperSightはCBCT撮影時間が約6秒と従来よりも短縮され,高画質なCBCT画像が取得可能となった。これを受け,2024年4月に,特定の条件下で撮影したCBCT画像を治療計画用として使用可能となる旨の薬機法承認の追加がなされた。使用上の注意事項として,位置合わせ用のCBCTについては,125kV以上かつ176mAs以上にて画像を取得する場合に,治療計画に使用することができる。この条件を満たすCBCT Modeは,Thorax,Thorax Slow,Pelvis,Pelvis Largeとなる(図1 左)。また,治療計画に使用可能なReconstruction Modeは,iCBCT AcurosかiCBCT MARの選択となる(図1 右)。
図1 Halcyon HyperSightのCBCT Mode(左)とReconstruction Mode(右)
Offline ARTのワークフロー
初回治療計画は,治療計画用CT装置によるCT画像(P-CT)を使用して作成し,治療開始の準備をする。初回治療時にCBCT ModeはPelvis,Reconstruction Modeは再構成時間を考慮してiCBCTを設定する。設定したパラメータは次回以降引き継がれるため,再治療計画用の画像が必要な際のみReconstruction ModeをiCBCT Acurosに変更し,取得後は元の設定に戻す運用としている(図2)。以下,本稿では再治療計画用のCBCT Mode:Pelvis,Reconstruction Mode:iCBCT AcurosによるCBCT画像をHS-CBCTとする。
図2 Offline ARTのワークフロー
Offline ART導入のメリット
再治療計画に位置合わせ用のCBCT画像を使用することで,(1) 治療計画用CT室への移動が不要となり,効率化と患者負担の軽減につながる,(2) 改めて撮影する必要がなく,被ばく線量の低減になる,(3) 同室での画像取得のため再現性を向上しやすい,という利点が得られる。また,治療期間中の経過で再治療計画が必要となりうる傾向が見られた際に,随時iCBCT Acurosを設定して再治療計画に使用する画像を取得することができ,患者に改めて再治療計画用の撮影をすることについての説明を簡略化できる。
Offline ARTの臨床導入に関する検討
HS-CBCTを治療計画に使用するには,CT値電子密度変換テーブル(CT-ED Table)の取得において,P-CTと同等のハンスフィールドユニット(HU)値の精度を必要とする。今回,ファントム厚とブレード幅についての検討を報告する。ファントム厚は,Sun Nuclear社製「Advanced Electron Density Phantom」16.5cm厚と「Solid Water」10cm厚を頭尾方向にそれぞれ追加した36.5cm厚とした。有効視野(FOV)は最大の53.8cmで固定し,Yブレード幅は最小の2cmと最大の28cmとした。
Physical DensityのCT-ED Tableを図3に示す。P-CTのCT-ED Tableに最も近いのは,ファントム厚36.5cmとYブレード幅28cmの組み合わせとなったが,Physical DensityのBone(1.923g/cm3)で約60HU,Lung(0.291g/cm3)で約30HUの差をわずかに認めたため,HS-CBCT専用のCT-ED Tableをバリアン社製治療計画装置「Eclipse」に別途登録して運用している。
図3 ファントム厚とブレード幅によるCT-ED Tableの比較
Offline ARTによる再治療計画の症例
● 前立腺がん根治照射(中リスク)60Gy/20回
骨構造からの前立腺の照射位置において,腹背方向(Vrt)と頭尾方向(Lng)で約10mmの移動量が初回から継続していたことから,4回目にHS-CBCTを取得した。初回治療計画の輪郭を基に修正をして再治療計画を作成し,8回目から再治療を開始した。治療終了までは最大4.5mmの移動量で安定した。
・線量処方:計画標的体積(PTV)に対してD50%
・線量分布の比較:P-CTの初回治療計画を基準とした線量分布の比較では,HS-CBCTに大きな相違は認められない(図4 右上)。
・線量体積ヒストグラム(DVH)の比較:PTVのD98%の差は0.8Gy,D2%の差は0.3Gy,rectumおよびbladderのV54Gyの差はそれぞれ1.9%,4.3%,V17.5Gyの差はそれぞれ2.3%,10.4%でbladderにおいては尿量の差が見られたが,線量制約の範囲内となった(図4 右下)。
図4 P-CTの初回治療計画とHS-CBCTの再治療計画の比較
Offline ARTに関する業務時間
前立腺がん根治照射におけるOffline ARTに関する業務では,CT撮影の説明と同意,CT撮影,画像取り込みを省略でき,画像融合に約5分,輪郭描出に約30分,再治療計画に約30分,計画承認に約10分,計画チェックに約10分,照射準備に約15分を要し,合計約100分で再治療開始の準備が可能であった(図5)。
図5 Offline ARTに関する業務時間
まとめ
Halcyon HyperSightによる位置合わせ用のCBCT画像を使用するOffline ARTのメリットは多く,2025年に20例を実施した。一方,脂肪織が少ない場合や腸管内ガスが多い場合,金属アーチファクトの影響が強い場合には輪郭描出しづらいケースがあった。今回の位置合わせ用のCBCT画像を使用する運用では,CBCTパラメータをあらかじめ設定するため,処理後に画像の視認性を確認することとなり,モーションアーチファクトや金属アーチファクトをより低減したい場合にマイナス面となる。対応策として,撮影後に再構成が可能であるCBCT for Planning(CBCTp)機能を組み合わせることで,視認性の向上が期待でき,より柔軟なCBCT画像を使用したOffline ARTが実施できる。
