VARIAN RT REPORT
2026年7月号
人にやさしいがん医療を放射線治療を中心に No.34
RapidArc Dynamicが拓く高精度外部照射の新時代─新たな照射技法のポテンシャルを議論するシンポジウム─
〈セミナー報告〉日本放射線腫瘍学会 第39回高精度放射線外部照射部会学術大会 ランチョンセミナー2
開催日:2026年3月14日(土), 座長:木村 智樹(高知大学医学部放射線腫瘍学講座)
RapidArc Dynamicを用いた肺癌放射線治療計画
植田 太朗*1/近藤 裕太*2/林 直弥*2/木村 智樹*1
*1高知大学医学部放射線腫瘍学講座 *2 高知大学医学部附属病院医療技術部
はじめに
高知大学医学部附属病院では,バリアン社からの委託研究として,局所進行肺癌における「RapidArc Dynamic(RAD)」の臨床評価を行ってきた。RADの特徴として,任意の角度で停止し照射するStatic Angle Modulated Port(STAMP)と,ガントリ回転中にコリメータも回転するDynamic Collimator Rotationがある。従来の強度変調回転放射線治療(volumetric-modulated arc therapy:VMAT)から進化した新しい照射技法として,治療計画の質の向上が期待される1)。本稿では,RADを用いた肺癌放射線治療計画について紹介する。
当院の日常臨床におけるplanning policyについて
RTOG 0617試験では,強度変調放射線治療群は全生存率の改善には寄与しなかったものの,進行症例が多い中でGrade 3以上の放射線肺臓炎を低減した2)。またPACIFIC試験以降3),デュルバルマブ維持療法が標準治療となったことを踏まえると,デュルバルマブの投与遅延や中止を回避する観点からも,Grade 2以上の放射線肺臓炎を低減することは臨床的に重要である。そのため,当院では,PTVカバレッジや心臓・食道線量に留意しつつ,肺線量を可能なかぎり低減することをplanning policyとしている。
Planning studyの方法と結果
planning studyの実施に当たっては,2025年に根治的放射線治療を施行した切除不能局所進行肺癌10症例を対象とした。当院では基本的に安静吸気止め,D50%=66Gy処方で治療計画を行っている。線量指標(Lung-GTVのV5Gy,V20Gy,Dmeanなど)をWilcoxonの符号付順位和検定を用いて比較した。PTVカバレッジを実臨床と同等に維持しつつ,可能な範囲で肺線量の低減が可能か検討した。全症例においてPTVへの線量を維持しつつ,肺線量低減が可能であった。結果を示す(表1)。
表1 RAD とVMAT 10症例の線量比較
症例提示
図1は,左肺下葉原発で肺門縦隔から対側鎖上リンパ節転移のある症例で,実臨床でも肺V5Gyの線量制約を満たすことに難渋した。肺線量低減を意識し,腹背方向や胸壁に伸びるような方向にSTAMPを使用した。RADとVMATの比較では,Lung-GTVのV20Gy(28.2%と19.7%),V5Gy(57.8%と57.5%),Dmean(13.7Gyと11.8Gy),PTVのD98%(85.8%と 84.3%),D2%(104.7%と104.6%)と,PTVを維持しつつRADの方が肺線量低減が可能であった。
図1 RADを用いた肺癌放射線治療計画の一例
今後の展望
RADは,従来のVMATと比較し肺線量低減が可能であり,肺癌領域においてRADを用いることで治療計画の質の向上が期待される。また,RADは自由度の高い手法であり,各施設のplanning policyに応じた治療計画が可能である。今後は症例ごとに最適なSTAMPやoptimise設定について,さらなる検討が必要である。
●参考文献
1)Clark, R., et al., Cureus.,17(6) : e86280, 2025.
2)Bradley, J.D., et al., J. Clin. Oncol., 38(7) : 706-714, 2020.
3)Spigel, D.R., et al., J. Clin. Oncol., 40(12) : 1301-1311, 2022.
RapidArc Dynamicを用いた子宮頸癌VMAT
平田 岳郎*1,2 / 秋野 祐一*2
*1大阪大学大学院医学系研究科放射線治療学 *2奈良県立医科大学放射線腫瘍医学
高精度放射線治療への期待
子宮頸癌に対する放射線治療(RT)において,術後RTのみならず根治RTの場面でも,強度変調放射線治療(IMRT)の技法が活用されるようになっている。現在の標準治療(化学放射線療法+免疫チェックポイント阻害薬)の根拠となっているKEYNOTE-A18試験でも,89%の症例でIMRTが使用されていた1)。術後RTのデータではあるが,RTOG 12-03試験では,IMRTが従来の三次元原体照射(3D-CRT)と比較して消化器系・尿路系の有害事象を軽減することが示されている2)。また,同じく術後RTに関するPARCER試験では,Grade 2以上の消化器系有害事象の3年累積発生率が,IMRT群で15.8%,3D-CRT群で30.9%と,IMRTによる消化器毒性軽減効果が報告されている3)。近年,血液毒性軽減をめざした骨髄スペアリングIMRTにも注目が集まっている。骨髄内の低〜中線量域のボリュームを低減させることにより,血液毒性の軽減にも寄与する可能性が示唆されている4)。
「RapidArc Dynamic(RAD)」を用いた治療計画の検討
RADの特徴として,Dynamic Collimator Rotation(ガントリ回転中にコリメータがダイナミックに回転する機能)と,IMRT固定ポートを組み合わせたStatic Angle Modulated Port(STAMP)が挙げられる。各ガントリ角度でPTVに対してマルチリーフコリメータ(MLC)が最も有効に機能するコリメータ角度が全自動で選択されるため,計画立案の手間が大幅に軽減される。
当院では従来,10MV FF・2arc・コリメータ30°+80°固定のIMRT(VMAT)計画を採用してきた。RADを用いることで,コリメータ角度を全自動最適化した2arc計画(RAD 2arc)を構築し,子宮頸癌術後IMRT(50.4 Gy/28回・PTV D50処方)の10症例において従来法との比較検討を行った。評価指標はPTVのD2%, D95%とD98%,直腸(Rectum)のDmax, V50GyとV40Gy,膀胱 (Bladder)のDmaxとV45Gy,腸管 (Bowel bag)のV40Gy,骨盤骨 (Pelvic Bone)のV40GyとV10Gy,馬尾神経のDmax,大腿骨頭のV30Gyとした。
結果,PTVの評価指標はRAD 2arcと従来法でほぼ同等であった(D2%:102.3% vs. 101.8%,D95%:96.5% vs. 97.7%,D98%:95.0% vs. 96.8%)。一方,OARについては,従来法では直腸V40Gyが95.1%と高かったのに対し,RAD 2arcでは68.6%へと改善した。膀胱V45Gy(54.5%→43.9%),骨盤骨V10Gy(90.6%→74.4%)においても明確な改善が認められた。RADにより,PTVのカバレッジを維持しつつ,直腸・膀胱の中~高線量域,骨盤骨の低~中線量域の線量分布を改善することが可能となった(図1)。
なお,STAMP×4を追加したRAD 2arc+STAMPプランとRAD 2arcのみのプランを比較したところ,一部症例ではSTAMP追加で大腿骨頭や馬尾神経の線量低減が可能であったが,多くの症例でDVHにほぼ差は見られなかった。コリメータ角度を自動回転させた場合(RAD)と固定した場合(従来型のVMAT)の比較では,RADの線量分布が良好であり,コリメータ回転の制御のみで治療計画が改善可能であることが確認された。
図1 RADによる線量分布の改善
まとめ
各手法を総合的に評価すると,RAD 2arcはPTVカバレッジ・OAR線量低減・照射効率のすべてにおいて優れており,子宮頸癌VMATの標準的な治療計画手法として有用と考えられた(図2)。
図2 放射線治療(VMAT)計画における各手法の総合的な評価
●参考文献
1)Lorusso, D., et al., Lancet, 404(10460) : 1321-1332, 2024.
2)Klopp, A.H., et al., J. Clin. Oncol., 36(24) : 2538–2544, 2018.
3)Chopra, S., et al., J. Clin. Oncol., 39(33) : 3682–3692, 2021.
4)Huang, J., et al., Radiat. Oncol., 15(1) : 180, 2020.
RapidArc Dynamicを用いた転移性脳腫瘍SRT
西岡健太郎
北海道大学大学院医学研究院医理工学グローバルセンター
転移性脳腫瘍に対する放射線治療の変遷と課題
転移性脳腫瘍は担癌患者の10〜30%に発生すると報告されており,近年の薬物療法の発展による生存期間の延長およびMRI撮像機器の普及・撮像技術の進歩によって転移性脳腫瘍の頻度は増加している。従来は4個以下の少数病変に対しては定位放射線治療(SRT)を行い,多数の病変を認める場合は全脳照射を行うことが標準的であったが,全脳照射後の認知機能障害に対する懸念や,ガンマナイフの大規模な後方視解析の結果から,近年は多数病変に対してもSRTが好まれる傾向にある。
従来のSRTは単一アイソセンターごとに単一病変を標的とした固定多門照射が標準であったが,近年は強度変調放射線治療(IMRT)の技術により腫瘍に対する線量集中性が高まり,さらに多発病変に対しても単一アイソセンターで同時に照射を行う効率的な治療が可能となっている。しかし,照射野の強度変調はマルチリーフコリメータ(MLC)を用いて行われるが,コリメータ角度はガントリ角度にかかわらず一定であるため,MLCの挿入方向は必ずしも最適にはならず,さらに総MU値が高くなることからMLC間の漏洩線量も無視できない問題であった。
「RapidArc Dynamic(RAD)」の特長
バリアン社から「Eclipse ver.18.1」および「TrueBeam ver.4.1」のオプション機能として「RapidArc Dynamic(RAD)」が発表され,2025年7月から販売開始された。RADは,ガントリ回転に応じてコリメータ角度をリアルタイムに変化させるDynamic Collimator Rotation機能によりMLCおよびJawの配置最適化を実現し,MLCの移動方向に依存した幾何学的制約や漏洩線量を低減する。また,Static Angle Modulated Port(STAMP)により照射方向ごとの線量寄与を制御可能となり,治療計画の自由度が向上する。さらに,GPU対応の次世代アルゴリズムにより線量計算の高速化が図られている。
転移性脳腫瘍のSRTにおけるRADの検討
今回,転移性脳腫瘍のSRTにおけるRADを用いた治療計画の特徴と有用性について,従来の強度変調回転放射線治療(VMAT)との比較を中心に検討した。当院にてSRTを施行した転移性脳腫瘍症例のCT画像と輪郭情報を使用し,VMATおよびRADの2通りの治療計画を作成した。RADの機能を正確に評価できるよう,いずれもビーム配置は4軌道・4門の回転照射,6MV(FFF)のX線を用い,線量指示法・線量制約は同一とした。線量分布およびDVHの比較では,RADは従来のVMATよりも正常脳の中高線量域を低減し,より良好な線量分布を示した(図1)。病変数が少数の症例(3個)と多数の症例(13個)を比較すると,多病変の症例においてその利点は顕著であり,特に多病変に対するSRTでの有用性が示唆された。一方で,至適な最適化パラメータの設定や,どのような症例で最大の利益が得られるかについてはいまだ明確ではなく,今後の検討課題と考えられた。本技術は治療計画の質向上および作成時間の短縮に寄与する可能性があり,さらなる使用経験/Users/kawabata/Desktop/inNavi_renewの蓄積と標準化により,より高精度な放射線治療の実現が期待される。
図1 病変数13個の症例におけるVMATとRADの線量分布例
↑の部分に認められる中線量域の拡がりや,↓・↑部分の等線量曲線のブリッジングが,RADで改善している。
放射線治療計画用ソフトウェア Eclipse:承認番号 22900 BZX 00265000
TrueBeam 医療用リニアック:承認番号 22300 BZX 00265000
QR 700040143
